Exhibitions
#on view / kanzan gallery
emergence|宇賀神拓也
2024.8.22 Thu - 9.22 Sun
*作家在廊日: 8/31(土) 9/1(日) 9/7(土) 9/8(日) 9/14(土) 9/15(日) 9/21(土) 9/22(日)
GALLERY TALK|9月8日[日]15:00 - 16:30
会場:kanzan gallery 予約不要/入場無料
宇賀神拓也 (写真家) × 港千尋 (写真家・多摩美術大学美術学部情報デザイン学科教授)
進行 菊田 樹子(インディペンデントキュレーター)
[概要]
自身が住む長野県朝日村にて行われた発掘調査に立ち会う機会を得た宇賀神は、縄文時代の地層から遺物が出土する様子に強い衝撃を受け、それを大判フィルムカメラを用いて撮影しました。発掘の現場では人間の手によって慎重に表土を削ることでバラバラになった土器片が少しづつ姿を表します。何かが浮かびあがる(= emerge )ようにして遺物が出土するその過程を記録した宇賀神の写真は、普段私たちが資料館などで陳列されている復元され静止した土器を見る体験とは大きく異なり、創造と破壊、生と死といった隠喩の力をその内に秘めながら私たちの目の前に写真というイメージとして提示されます。
朝日村で米作りも行う宇賀神は農作業に励む人々のかがむ姿勢に着目し制作した作品『かがむ人』以降、人と土の営みに関心を寄せながら、文字通り掘り下げるように自分が住む土地でテーマを定め撮影を行なってきましたが、ここ数年は村で出土した石器の接写を行うなど考古学的なモチーフの撮影に励んでおり、本展は宇賀神の制作活動における現在地として位置付けることができます。
本展では800mmx1000mmの大型プリントを中心に15点を展示いたします。過去の展示と同じく、今回も額は全て宇賀神による自作のものを使用いたします。
#on view / kanzan galeryは、写真集の発行記念展や巡回展、または展示の実験の場として、写真・映像作家が主導する展示企画をサポートするプログラムです。当展は、第12回目となります。
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長野県朝日村。私が住むこの村が新たに計画する分譲住宅予定地で縄文土器の破片が見つかったため、発掘調査を行うという。発掘作業の現場を撮影したいと村に申し出たところ、幸運なことに快諾された。
発掘が始まり、大型重機が地表を大雑把に掘っていくと、やがて黒土の下に少し赤みがかった縄文の地層に到達する。そこからさらに熟練作業員が鋤簾、竹串、ブラシなどの道具を使いながら、彫刻作品を作り上げるように慎重に土を削っていく
と、そこに土器などの遺物が姿を現した。見慣れた田園風景のすぐ足元に現れた古層。二つの時間が同時に目の前にあることが不思議でたまらなかった。
土器のほとんどは壊された状態で見つかった。土の重みで自然に潰れたものもあるが、意図的に打ち捨てられたような姿で見つかるものもたくさんあった。かつて人々と共に生きた土器は道具としては一度死に、地中の闇に5000年近く沈んだのち、再び人間の手によって掘り起こされ、光を浴びる。その瞬間に何度も立ち会った。土をめぐる果てしない人間の営みの過去と現在が私の足元で渦を巻き、溶け合う。その未知なるイメージは私の心の表層を突き破り、その下奥深くで眠っていた神話の水脈に雪崩れ込み、心の河床を激しく揺らした。なぜ人間はイメージを生むのか?不意に襲ってくるその問いの答えを目の前の土器が囁いている気もするが、その記録を試みるのであれば、光と闇を司る写真をおいて他にはないだろう。そう信じて、発掘現場を夢中でフィルムに収めた。
掘り出された土器片はその後継ぎ合わされ、村の資料館に収蔵された。氏神遺跡と名前がついた発掘現場は分譲住宅地として埋め戻され、今では新しい家が建ち、多くの家族がそこに暮らしている。
Profile
宇賀神拓也 / Ugajin Takuya
1976年生まれ
早稲田大学第一文学部東洋哲学科卒業。
2012年より長野県朝日村に移り住み、米野菜、味噌醤油を作りながら、自分が住む村をフィールドに撮影を続け、各地で作品を発表。印画紙の裁断、プリント、額の製作、額装まで写真作品制作に関わる作業を一貫して行う。 同村にて暗室完備のギャラリー兼スタジオ「BLUE HOUSE STUDIO」主宰
過去の主な展示
2018年6月 “ハイエナの夢” ( galery201/東京)
2018年11月 “cave” ( GREEN FINDS KAMAKURA/鎌倉市)
2019年5月 “cave” ( 朝日美術館/長野県)
2019年10月 “朝日村の縄文土器展” (朝日美術館/長野県)
2021年7月 ”かがむ人” (ニコンサロン新宿)
2021年9月 ”JOMON-SPIRAL” (galery201/東京)
2021年11月 ”JOMON-SPIRAL” (Cy/鎌倉市)
2022年5月 ”JOMON-SPIRAL” (GRAIN-NOTE/松本市)
2023年10月 “いのちの穂先” (Cy/鎌倉市)
2023年11月 “いのちの穂先” (BLUE HOUSE STUDIO/長野県朝日村)
受賞歴
2022年 塩竈フォトフェスティバル2022 写真賞 /Nikon賞