Kanzan Curatorial Exchange

『Chronicling the Unknown/無名の記録』vol.2

無名の記録 : エピローグ

Chronicling the Unknown : In Epilogue

キュレーター Aida Eltorie / アイーダ・エルトリ

2016年11月8日-30日

 OPENING RECEPTION : 11月12日 (土) 18:00-20:00

 ARTISTS TALK                : 18:30~

 ※ネルミン・ハンマムさんは都合により不参加になります。

この展覧会はKanzan Galleryでの2回にわたる「無名の記録」展の後編となる。

 

今回展示する2名のアーティストアキレスケントニス嶋田美子による作品は、人類が生み出した課題である憎しみ怒り情熱不死秘密暴露などを記録するものでその背景には真実に対峙する問いかけがある。

 

 

アキレス・ケントニスの作品「タイムカプセル」は、捨てられていたある家族のアーカイブから発見された写真で成り立っている。ケントニスはそれらの中にある日常生活と匿名性の要素を抽出し、そこから見いだされた物語を再構築し、それらの行動やパターンを彼の個人的な経験と重ねあわせ、科学的手法で観察し、変容させた。 誰かの死、家族の葬儀の写真、砂浜で休暇を楽しむナチス党党員とその妻の写真、東南アジアのとある国での子供たちによる射撃訓練などが写し出される写真には、「別のどこか」の森にハンモックが吊り下げられたのどかな風景が背景として組み合わされている。ケントニスのイメージは、記録として残された人々の仕草の内応を「タイムカプセル」を通して変化させる。 各イメージは独特のセミオロジー(記号学)を持ち、それらは一連の人間行動様式に基づいて、映画スチルのように配置されている。現実と虚構の境目はロマンティシズムと皮肉をもって超現実的に曖昧化され 、不安、放棄、偶然、変化が、それぞれの物語の視覚的迷路を最終的に繋いでいる。

 

「箪笥の中の骨-家族の秘密」では、嶋田美子 が今日まで続く1,000以上の「家族の秘密」のアーカイブ記録の一部を提示する。観客は引き出しを開けることによって、そこに多国語で書かれた、人間の最もプライベートな思いや、苦痛、悲しみ、後悔、悲しみなどに深く立ち入ることになる。これらの箪笥は、家族の最も暗い秘密への洞察を公にし、匿名性を保ちながらも、摂食障害、近親相姦、同性愛、個人的、また歴史的アイデンティティの危機などの問題を訴えかける。

 

箪笥は、日本社会を表現しているとも言え、不都合な歴史の記憶を世間から隠す場所である。引き出しの隅の闇の中には家庭の秘密、また日本の集団的心情の深く暗い底のメタファーが潜んでいる。ギャラリーの隅にある黒いカーテンの裏には2012年に制作されたヴィデオ「日本人慰安婦像になってみる」が上映される。これは歴史の中で女性の声がかき消されて来たことを再認識させる作品であり、2011年、ソウルにある日本大使館の前に建てられた慰安婦の銅像を参照し、同様に性の商品とされた全体の10%に上る日本人慰安婦達の存在の認識を問うている。韓国政府は日本に対してその植民地時代の圧政と女性の性的搾取への謝罪を求めているが、日本の慰安婦たちはその間自らのアイデンティティに対する社会的スティグマ(烙印)のために沈黙を強いられて来た。嶋田は自ら銅像作品となり、横に空席の椅子を置いて、ロンドンにある日本大使館の前に座るというパフォーマンスを行った。さらに同年、日本の国会前、靖国神社(明治以後戦死した兵士を神として祀っている)の前でも慰安婦の銅像となり、隣に空席を置き、日本人慰安婦達のことを訴えた。その中の一か所ではすぐに排除されたが、別のところでの反応は無関心と沈黙であった。

 

 

ここで展示されている二つの作品群を前にした時、そこに相互関係性が現れるかもしれないし、各作品が独立して私たちに語りかけるかもしれない。 これらの作品群は、匿名のアーカイブを通じて、人間の現状に対して問いかけることがその要となっている。

 

 

 

 

アキレス・ケントニス

ニコシア(キプロス)を拠点とするアーティスト。サウスアラバマ大学(アメリカ)とカスティーリャ・ラ・マンチャ大学(スペイン)にて、電気工学、物理学、視覚芸術を学ぶ。また、MIT(マサチューセッツ工科大学、アメリカ)のマスタリングイノベーション&デザイン・シンキング(Mastering Innovation & Design Thinking)コースにも参加した。

 ケントニスは、ビジュアル・アーティストとして多くの個展を開催し、2013年のヴェニス・ビエンナーレをはじめとするさまざまなビエンナーレに選出されてきた。制作は、写真、エッチング、建築、舞台や衣装のデザイン、インスタレーション、ビデオアート、ショートフィルム(実験映画、アニメ、ドキュメンタリー)、サウンドアートなど多岐にわたる。また、国際的なアート・イベント、シンポジウム、会議、セミナー、レクチャーなどを主催、企画Urban Inventions/actions(都市への介入や行動)、オンライン・プロジェクト、地政学のアート、国際的なプロジェクト、アートブックの出版などを手がけてきた。

 

 

嶋田美子

1959年東京生まれ、現在は千葉に在住。1982年カリフォルニア州スクリップス・カレッジ卒。2015年「現代思潮社・美学校:1969−75」の研究で英国キングストン大学より博士号取得。

 嶋田の作品テーマは、文化的記憶と、戦時中の女性の加害者として、被害者としての役割である。嶋田の作品は、最近では2015年テルアビブ大学付属美術館での「Beyond Hiroshima」展で展示された。彼女のインスタレーションや版画は、2002年の光州ビエンナーレをはじめ国際的に展示されている。主な展覧会は「愛と孤独、そして笑い」(東京都現代美術館、2005)、「ファンタスティック・アジア」(ソンゴク美術館、ソウル、2005)、「アティテュード」(熊本市現代美術館、2002)、「セックス アンド コンシューマリズム 」(ブライトン大学付属美術館他、英国、2001)、「ダーク ミラーズ フロム ジャパン」(デアペルファンデーション、オランダ、2000)、「ジェンダー:記憶の淵から」(東京都写真美術館、1996)など。

 

 

協力:Artos Foundation

 

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