Kanzan gallery 特別展示

軽井沢時代 1947-1960 森澤勇

キュレーター:菊田樹子

 

2018年 12月8日(土)- 26日(日)

12:00-19:30/日曜17:00まで/月曜定休/入場無料

 

 12月8日(土)

OPENING TALK : 17:30-

森澤ケン(写真家) × 谷口昌良(空蓮房 房主)

RECEPTION : 19:00-

 

12月15日(土)

TALK 2 : 16:00-

大坪晶(美術作家・写真家) × 菊田樹子(キュレーター)

 

[プレスリリース]

 当展は、戦後まもない時期より、「軽井沢銀座」と呼ばれる旧軽井沢の目抜き通りで写真店を営んでいた森澤勇(1913年〜1973年)が、1947年から1960年ごろに撮影した作品で構成されている。

 

1913年、横浜に生まれた森澤勇は、41年に日本映画社に入社し、国策映画のカメラマンとして活躍した。45年に家族を軽井沢に疎開させ、終戦と同時に自らも軽井沢に移転。47年に「モリサワ・フォトショップ」を開業し、60年の閉館まで、独特の距離感で日本の富裕層、そして進駐軍の避暑地として栄えていた軽井沢の、街、人々、自然を見つめた。

 

私がこの作品に出会ったのは、10年ほど前のこと。空蓮房*で行われた、森澤勇の孫である森澤ケン氏のトークがきっかけだった。写真家であるケン氏は、ある日実家の物置で「軽井沢時代」と大きく書かれた古びた段ボール箱を発見し、その中のネガを自らの手で現像し、選び、写真集や展示という形にしてきたという。自分が生まれる前に亡くなった祖父と、写真を通して邂逅する。その不思議さや素晴らしさに心を揺さぶられる一方で、なぜか古い写真を見た時にほぼ自動的に湧き上がる「古き良き時代へのノスタルジー」を、これらの写真にほとんど感じないことに戸惑った。そして、なぜこんなにも1枚1枚を繰り返し凝視してしまうのか、私は何を見ているのかという疑問と共に、「軽井沢時代」の持つある種の「手に負えなさ」に捕らわれてしまった。

 

これらは、「明るい部屋」(ロラン・バルト)をまさに実体験した(写真に写されたものは「かつて そこに あった」、そしてその前後には「無」がある。写真はすべて存在証明。写真の記録性。プンクトゥムとストゥディウムの往還、など)という以上のものではないという指摘もあるだろう。しかし、それでも浮かんでくる問いは、むしろ年々増えるばかりなのだ。

・ 「写真と時間」の関係、とらえてしまうもの、残ってしまうもの

・ 過去の写真から、現在を生きる私たちは、何を感じ、受け取ることができるのか(できないのか)。そして、何を残すことがきるのか(できないのか)。

・  自己表現の必要性や限界

・ 作品とは、誰のものか

・ ファウンドフォトを使った芸術作品の意味

・ 写真はなぜ時を越えて人をつなげるのか

 

これらの問いを来場者の皆さんとシェアし、展示とトークを通して考えようというのが、今回の企画意図である。

 

* 空蓮房 東京都の蔵前、長応院境内にあるギャラリー。https://kurenboh.com/

 

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【Kanzan Gallery特別展示】

当ギャラリーでは毎年12月に、写真をとらえ直す試みとして、現在の“芸術”とは(おそらく)別の意識で撮影された写真から、私たちが何を感じ、受け取ることができるのかをテーマにした特別展示を行ってきました。これまでに、昭和初期に現在の長崎市片淵にあった伝説の響写真館と館主の井出傳次郎、そしてポーランドの著名なアーティスト、ヴィトルド・レーマー(Witold Romer)のプライベートアーカイブの展覧会を開催しました。

 

 

 

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