Kanzan Curatorial Exchange「残存のインタラクション」vol.1
飯岡幸子展「永い風景」
企画:和田信太郎 / 施工:清水玄 / 広報+進行:青柳菜摘
協力:コ本や honkbooks
2017年9月5日(火)- 10月1日(日)
飯岡幸子 Yukiko IIOKA
1976年福岡県生まれ。東京都在住。映画美学校ドキュメンタリーコースにて佐藤真氏に師事、映像制作をはじめる。東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻修了。監督作品に『オイディプス王/ク・ナウカ』(2000)、『ヒノサト』(2002)。撮影作品に『ひとつの歌』(2011/杉田協士監督)など。今回はじめて展示形式で作品を発表する。
「残存のインタラクション」
写真や映像といった記録メディアには何が残存しているのか。イメージ特有の振れ幅が語りを誘発し、語りを困難にもする。ドキュメンタリーの方法を探究する映像作家(飯岡幸子)と、作者と作品の関係性に着目する美術家(原田裕規)の全2回の展覧会(個展)を通して、記録や表現のあり方とその行為に迫っていく。
▶TALK + OPENING RECEPTION : 9月9日(土) 16:00-
TALK:16:00-
「ふるさと。風景。フィクション。」
ゲスト:瀬尾夏美(画家/作家) × 濱口竜介(映画監督) × 飯岡幸子
無料/定員25名/要予約*ご好評につき予約席、立ち見席は定員に達しましたので受付を終了させていただきました。
17:30からのレセプションにはご自由にご参加いただけます。
RECEPTION:17:30−
瀬尾夏美 Natsumi SEO
画家、作家。1988年東京都生まれ。土地の人びとのことばと風景の記録を考えながら、絵や文章をつくっている。2012年より、映像作家の小森はるかとともに岩手県陸前高田市に拠点を移し、地元写真館に勤務しながら制作を行う。2015年仙台市で、土地との協同を通した記録活動を行う一般社団法人NOOK(のおく)を立ち上げる。
濱口竜介 Ryusuke HAMAGUCHI
映画監督。1978年生まれ。東日本大震災の被災者へのインタヴューから成る『なみのおと』『なみのこえ』、東北地方の民話の記録『うたうひと』(2011~2013/共同監督:酒井耕)など、地域やジャンルをまたいだ精力的な制作活動を続けている。最新長編『ハッピーアワー』(2015)はロカルノ国際映画祭にて最優秀女優賞および脚本スペシャルメンションを受賞。新作映画『寝ても覚めても』が、2018年に公開予定。
▶映画上映+トークイベント:9月22日(金) 18:00-
上映 × トーク「忘れるということ。思い出すということ。」
映画上映「ヒノサト」(42min)
ゲスト:高山明(演出家) × 飯岡幸子
無料/定員25名/要予約 *ご好評につき予約席は定員に達しましたので受付を終了させていただきました。
高山明 Akira TAKAYAMA
演出家。1969年生まれ。演劇ユニットPortB(ポルト・ビー)主宰。既存の演劇の枠組を超え、実際の都市を使ったインスタレーション、ツアー・パフォーマンス、社会実験プロジェクトなど、現実の都市や社会に介入する活動を世界各地で展開している。2016年度より東京藝術大学大学院映像研究科准教授。
【ヒノサト】
監督・撮影・編集:飯岡幸子 (2002/42min)
制作:映画美学校
http://eigabigakkou.com/films/works/works2002/2239/
企画は彼女の祖父、飯岡修(故人)が自作したというSPレコード用の蓄音機のエピソードからはじまった。祖父は第二次世界大戦中、ぎりぎりに出来上がった蓄音機を一度だけ回して、出征したそうである。実家に残る蓄音機の箱をきっかけに、年少の頃の記憶しかない祖父のことを知りたくなった飯岡は、彼が高校の美術教師をしていた福岡県宗像市日の里の取材をはじめた。「日の里」の町のあちこちには、飯岡修の油絵が残されているのである。だが、映画「ヒノサト」はそうした事情をまったく説明しようとはしない。映し出されるのは、現在の町の様子、それもキャメラが透明になったかのような、人々が撮られていることを意識していないような情景である。市民体育館、高校同窓会館、総合福祉施設、美術部の生徒の家などを巡っていくなか、キャメラはひっそりと壁に掛けられている絵を収めていくがそれは絵の前を町の人が視線も向けずに通り過ぎていくように、あくまで町の日常のなかで静かに息づいている。しかし、その絵のタッチを通して、やがて観客は画家の過去にも分け入って行く。そこに、白地に意味不明の字幕が小さく挿入される。それが画家の日記だと推測できるようになると、現在の日の里、過去の祖父の時間をを示す日記、そのふたつを通底させる絵という三つの時間が流れ出す。その三通りの離れた距離が画家のアトリエに光が射し込むのをきっかけに、接近し、未曾有の映画的緊迫を醸し出す。やがて、祖父の残したレコードの音が響くのだが、それは日記で予告されたブルックナーの「ロマンテック」ではなく、フルトヴェングラーの指揮するベートーヴェン「レオノーレ序曲第3番」である。だが、町と祖父の遭遇も一瞬の夢だったかのように、日常の時間が回帰してくる。町を見下ろす許斐山(このみやま)の高台の無人の情景で、この静謐な空間は閉じられる。(解説:筒井武文)
>>解説
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